鼓膜に穴があく鼓膜穿孔とはどんな状態?どんな治療をするの?

鼓膜穿孔(こまくせんこう)とは、文字どおり鼓膜に穴があいてしまった状態のことです。鼓膜に穴があくこと自体は、それほど珍しいことではありません。中耳炎などの病気が原因でもあくことがあります。通常、あいた穴は自然にふさがりますが、穴が大きかったり、何度もくり返しあいてしまったりすると、塞がらなくなることもあるでしょう。この場合は、治療が必要です。

そこで、今回は鼓膜穿孔の原因や治療方法をご紹介します。

  1. 鼓膜穿孔の基礎知識
  2. 鼓膜穿孔のセルフチェック
  3. 鼓膜穿孔の治療方法
  4. 鼓膜穿孔に関するよくある質問

この記事を読めば、鼓膜穿孔の予防方法も分かるでしょう。子どもが中耳炎をよく発症するという方や、耳だれがよく出るので悩んでいるという方も、ぜひ読んでみてくださいね。

1.鼓膜穿孔の基礎知識

はじめに、鼓膜穿孔(こまくせんこう)とはどのような状態かということや、鼓膜穿孔を放置しておく弊害をご紹介します。鼓膜に穴があいていて、聴力に影響はないのでしょうか?

1-1.鼓膜穿孔とは?

鼓膜穿孔とは、前述したとおり鼓膜に穴があいている状態のことです。鼓膜は外耳と中耳を隔てる膜のようなもので、音を振動に変化させて小耳という器官に伝える役割を担っています。鼓膜が破れると耳が聴こえなくなるというイメージがありますが、鼓膜が大きく破損しない限り、音が聴こえなくなるということはありません。

また、鼓膜は外傷や中耳炎等の病気で穴があくこともよくあります。中耳炎になると中耳の中に膿が溜まることがあり、その膿が鼓膜を突き破ることがあるのです。また、膿を出すためにわざと医師が鼓膜を切開することもあるでしょう。

外傷の場合は、耳掃除をしていて鼓膜を傷つけてしまったり、平手打ちの衝撃などで破れたりすることがあります。

どちらの場合も時間が経てば穴は自然と塞がるでしょう。しかし、何度も鼓膜が破れてしまうと穴が塞がらなくなることもあるのです。

1-2.鼓膜に穴があきっぱなしだとどうなるの?

鼓膜に穴があきっぱなしになると、聴力の低下や炎症が起こります。前述したように、鼓膜は音を振動に変える器官です。そこに穴が開いてしまえば、音が振動に変換されにくくなってしまいます。完全に聴こえなくなるわけではなく、音が遠くに聴こえたりくぐもって聴こえたりすることが多いでしょう。

また、鼓膜に穴が開いていると雑菌が中耳へ入り込みやすくなります。中耳の炎症とは、すなわち中耳炎のことです。鼓膜に穴があきっぱなしになると、中耳に発生した膿が耳だれとなって流れ出ます。不快なのはもちろんのこと、炎症をくり返すことで聴力が低下することもあるでしょう。

1-3.鼓膜穿孔は気づかないことも多い?

鼓膜に穴があくなんて大変だと思われるでしょうが、実は、鼓膜穿孔に気づかない方も多いのです。特に、中耳炎で鼓膜に穴があく場合は、溜まっていた膿が流れ出すことで一時的に痛みが軽減する場合もあるでしょう。特に、子どもの場合は膿が流れることで機嫌がよくなることもあるので、親が中耳炎だと気づかないこともあります。

とはいえ、鼓膜穿孔を放っておくと最悪の場合、髄膜炎などを発症することもあるので、耳鼻咽喉科を受診してしかるべき治療を受けましょう。

2.鼓膜穿孔のセルフチェック

  • 中耳炎を発症したことがある
  • 耳掃除をしていて、綿棒や耳かきに血がついたことがある
  • 耳付近に強い衝撃を受けた
  • 最近、音が聴こえづらいと感じることがある
  • 耳だれが頻繁に出るようになった
  • 耳の奥が痛む

このような場合は、鼓膜穿孔の可能性があります。できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。

3.鼓膜穿孔の治療方法

この項では、鼓膜穿孔の治療方法をご紹介します。どのような治療方法があるのでしょうか?

3-1.鼓膜穿孔かなと思ったら?

鼓膜穿孔が疑われる場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。医師が耳の中を診れば、すぐに鼓膜の状態が分かります。鼓膜にあいた穴が小さい場合は、そのまま様子を見ることが多いでしょう。また、耳掃除で鼓膜を傷つけた場合、中耳も傷ついている可能性がありますので、内視鏡などで詳しく検査されることもあります。

3-2.重症の場合は手術が必要

中耳炎が慢性化して鼓膜にあいた穴が大きい場合や、2~3か月様子を見ても鼓膜にあいた穴が塞がらない場合は、手術をすすめられることがあります。この手術を鼓膜穿孔閉鎖術といい、かつては1週間ほど入院が必要な大がかりなものでした。しかし、現在では鼓膜接着法という手術方法が開発され、日帰りで行うこともできるようになっています。

この手術は、局所麻酔を行って鼓膜の穴を塞ぐために人工的に作られた材料や、患者さん本人の皮下組織で穴を塞ぐのです。痛みは感じませんし、手術時間は1時間程度で終わります。手術後はしばらく休み、問題がなければ帰宅できるでしょう。その後は定期的に通院して鼓膜がうまく塞がれば成功です。この間、耳の中に水が入るような行為や、耳掃除は行えません。

3-3.鼓室形成術について

慢性中耳炎や、鼓膜の奥が陥没し、そこに耳垢が溜まることによって発症する真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)の場合は、中耳が破壊されてしまうこともあります。この場合、中耳の主な機能を再形成する鼓室形成術(こしつけいせいじゅつ)という手術をすすめられることもあるでしょう。鼓室とは、中耳の中やその中に納まっている器官を指す言葉です。この手術は、1泊2日の入院となり、時間をかけて行われます。鼓室が再形成されれば、低下していた聴力も回復するでしょう。

3-4.病院の選び方

鼓膜穿孔閉鎖術は、すべての耳鼻咽喉科で行っているわけではありません。今はホームページを開設している病院も多いので、手術を行っている場合は、その旨が記載されているでしょう。それを頼りに病院を選んでもよいですね。かかりつけ医がある場合は、まずそこを受診しましょう。手術を行っていない場合は、紹介状を書いてくれます。

4.鼓膜穿孔に関するよくある質問

Q.外傷で鼓膜穿孔になった場合も、自然に塞がるものでしょうか?
A.ほとんどが塞がります。ただし、爆発事故などに巻き込まれた場合は大きく破れてしまうことがあり、この場合は手術が必要です。

Q.医師が鼓膜切開した場合は、自然に塞がるのでしょうか?
A.はい、自然に塞がりますので心配はいりません。

Q.鼓膜穿孔を塞ぐ手術は、子どもでも受けることができますか?
A.子どもの場合は再生能力が高いので、手術することはほとんどありませんが、1人で座っていられるのなら大丈夫です。

Q.鼓膜穿孔の治療中に気を付けることはありますか?
A.細菌感染が怖いので、耳掃除や水泳、浴槽に潜るなどの行為はやめましょう。耳掃除も控えてください。

Q.中耳炎は気づきにくい病気なのですか?
A.痛みがありますが、小さな子どもの場合はうまく症状が伝えられないことも多いので、気づかれないこともあります。

おわりに

今回は、鼓膜穿孔の原因や治療方法をご紹介しました。細菌感染にさえ気を付けていれば、それほど恐ろしい症状ではありません。ただし、スイミングをしている方など耳に水が入りやすい場合は、細菌感染を起こす可能性もそれだけ高くなりますので、早めに治療を行いましょう。また、高齢者の場合は、穴が塞がりにくくなっているので注意が必要です。どうせ塞がるのだからと放置せず、必ず耳鼻咽喉科を受診しましょう。

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