副鼻腔気管支症候群とは? 主な症状や治療法をチェックしよう!

副鼻腔気管支症候群(ふくびくうきかんししょうこうぐん)は、連動して起こりやすい細菌性副鼻腔炎と気管支炎の状態が慢性化したものです。気管支の炎症が続いている状態なので、呼吸しづらく、咳(せき)が止まらなかったり、喉に違和感を覚えたりします。症状を放置していると呼吸困難になる恐れもあるのです。

本記事では、そんな副鼻腔気管支症候群について詳しく解説しましょう。

  1. 副鼻腔気管支症候群とは?
  2. 副鼻腔気管支症候群の症状
  3. 副鼻腔気管支症候群の診断基準
  4. 副鼻腔気管支症候群の治療方法
  5. 副鼻腔気管支症候群に関してよくある質問

この記事を読むことで、副鼻腔気管支症候群の症状を知り、改善のポイントが分かります。気になっている方はぜひ参考にしてください。

副鼻腔気管支症候群とは?

最初に、副鼻腔気管支症候群とはどのような状態を指しているのか、基本情報をチェックしておきましょう。

1-1.慢性副鼻腔炎・慢性気管支炎が合併した状態

副鼻腔気管支症候群は、慢性副鼻腔炎に慢性気管支炎・びまん性汎細気管支炎あるいは気管支拡張症が合併したものです。慢性副鼻腔炎のおよそ5%がこの副鼻腔気管支症候群になるといわれており、長く慢性副鼻腔炎に悩まされている中年層に発症する傾向があります。合併を起こす炎症と病状の特徴は、以下のとおりです。

  • 慢性副鼻腔炎:副鼻腔が慢性的な炎症を起こしている状態
  • 慢性気管支炎:原因不明の咳と痰(たん)の症状が長く続く状態
  • びまん性汎細気管支炎:呼吸細気管支に慢性の炎症が起こる病気
  • 気管支拡張症:気管支の一部が先天的に異常に拡張する慢性呼吸器疾患

1-2.副鼻腔気管支症候群になる仕組み

鼻の横にある空洞を副鼻腔といいますが、この部分が炎症を起こすと鼻汁が喉のほうに降りてきてしまいます。それが気管支に入り、気管支炎を起こすのです。同時に、鼻閉により鼻呼吸ができず口呼吸になり、より一層、気管支炎が発症しやすい状態になります。その結果、慢性副鼻腔炎と慢性気管支炎が合併し、副鼻腔気管支症候群へと悪化してしまうというわけです。

1-3.合併するのは副鼻腔と気管支が同じ気道だから

慢性副鼻腔炎と慢性気管支炎が合併する理由は、副鼻腔と気管支が同じ空気の通り道だからです。どちらの内部にも、同じ種類の粘膜が張っています。粘膜の一部が炎症を起こし、それを放置していると炎症箇所がどんどん広がってしまうのです。副鼻腔の炎症が気管・気管支の粘膜に広がり、慢性化して合併することになります。口・鼻・喉といった上気道は1つでつながっていることを覚えておきましょう。

副鼻腔気管支症候群の症状

では、副鼻腔気管支症候群は具体的にどのような症状が起きるのでしょうか。現在、あなたに現れている症状を比べながら、ぜひチェックしてください。

2-1.慢性副鼻腔炎の症状+頑固な咳と痰

慢性副鼻腔炎の症状に加え、頑固な咳や痰などが続く場合は、副鼻腔気管支症候群の疑いがあります。慢性副鼻腔炎の代表的な症状といえば、黄色で粘り気のある鼻汁です。鼻汁がネバネバしているのは、細菌やウイルスが混じっている証拠で慢性炎症を起こしています。この鼻汁が喉に流れ込むと後鼻漏(こうびろう)となり、咳の原因になるのです。ほかにも、目やほお・前頭部周囲が重たくなったり、嗅覚障害が起きたりします。これらの症状に加え、気管支炎の症状である咳や痰が重なるのです。

2-2.膿性の鼻汁・鼻づまりなど鼻症状が先行する

副鼻腔気管支症候群の主な症状は、膿性の鼻汁や鼻づまりなど、鼻の症状が先行するケースがほとんどです。副鼻腔炎の症状が鼻中心になるからでしょう。ほかにも、炎症による微熱が続いたり、気管支炎による息切れが起きたりします。「たかが鼻水だから」とあまく考えてはいけません。常に、鼻の中はスッキリとした状態でなければならないので、異変を感じたらなるべく早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。

2-3.咽頭炎や扁桃腺になりやすくなる

鼻の中にたまった鼻汁が喉に落ちると後鼻漏になるだけでなく、喉の奥にある咽頭後壁や扁桃腺にもこびりつくことになります。その結果、咽頭炎や扁桃腺になりやすくなってしまうのです。咽頭炎は咽喉に炎症が起きた状態で、喉の症状のほか、発熱や倦怠感・吐き気などの症状が起きます。咽頭炎と扁桃腺は風邪でよくある症状なので自覚しにくいですが、副鼻腔気管支症候群の症状が伴う場合は注意が必要です。

2-4.喘息発作を誘発することも

慢性的気管支炎が長引くほど、どんどん炎症は悪化し、最終的には喘息発作を誘発する可能性もあります。必ず発症するわけではありませんが、副鼻腔気管支症候群は通常の人よりも喘息発作になる確率が上がるので要注意です。日常生活に大きな悪影響をきたすことになるため、早めに適切な治療を受ける必要があります。喘息や咳を伴う場合は、長期管理の維持療法で予防することになるでしょう。また、子どもの咳が続くと慢性副鼻腔炎になり、後ほど副鼻腔気管支症候群になる可能性があります。喘息発作を誘発させる原因となるため、早めに対処することが大切です。

副鼻腔気管支症候群の診断基準

それでは、副鼻腔気管支症候群はどのように診断されるのでしょうか。治療法の前に、診断基準をチェックしてください。

3-1.副鼻腔気管支症候群の簡易基準診断は3つ

診断基準項目は、全部で3つあります。以下に、まとめたので、ぜひ参考にしてください。

  1. 呼吸困難発作を伴わない咳(しばしば湿性)が8週間以上継続する
  2. 以下の3つのうち、1つ以上を認める
    ・後鼻漏・鼻汁および咳払いといった副鼻腔炎に伴う自覚症状
    ・上咽頭や中咽頭における粘液性ないし粘液膿性の分泌物(後鼻漏)の存在ないし副鼻腔炎に伴う他覚初見
    ・副鼻腔炎を示唆する画像初見
  3. 14ないし15員環マクロライド系抗菌薬や去痰薬が有効

副鼻腔炎の有無を確かめるには、副鼻腔の画像所見が大きなポイントとなるため、CT撮影などを行うことになるでしょう。また、後鼻漏や咳払いも副鼻腔炎の存在を強く示唆する要素となります。

3-2.アトピー素因を認めないことも副鼻腔気管支症候群の基準ポイント

日本咳嗽研究会が発表している副鼻腔気管支症候群の診断基準には、先ほど紹介した1~3の基準のほかに、「アトピーの素因を認めない」という項目があります。アレルギー性鼻炎・粘膜炎・アトピー性皮膚炎・花粉症・蕁麻疹などの既住歴や家族歴がないことも、副鼻腔気管支症候群の重要な診断基準です。ただし、アレルギー性鼻炎から副鼻腔炎になることもあるため、アトピー素因の有無だけでは副鼻腔気管支症候群かどうか判断できません。前述した3つの簡易診断基準とあわせて、診断することになるでしょう。

副鼻腔気管支症候群の治療方法

副鼻腔気管支症候群の主な治療法には、どのような方法があるのでしょうか。

4-1.副鼻腔炎と気管支炎、両方の治療が必要

前述したように、副鼻腔気管支症候群は慢性副鼻腔炎と慢性気管支炎が合併した状態なので、どちらにも有効的な治療を行う必要があります。つまり、副鼻腔炎と気管支炎の両方の治療を同時進行で行うことになるでしょう。一般的にはマクロライド系抗菌薬や去痰剤の服用で、様子を見ながら治療をしていきます。マクロライド系抗菌薬の少量長期療法は、びまん性汎細気管支炎に有効であるという結果も出ているのです。いきなり大量の薬を服用するとめまい・吐き気などの副作用を生じる恐れがあるため、少しずつ投与しながら量を調節します。

4-2.内視鏡下副鼻腔手術を行うことも

内服治療で症状が緩和できない場合は、内視鏡を使った内視鏡下副鼻腔手術を行うことになります。内視鏡下副鼻腔手術は、ウイルスや細菌が感染して炎症を起こしている鼻腔の通り道を広く開け、本来の鼻に近い状態を作ることです。鼻本来が持っている自浄作用を回復させることができます。その結果、副鼻腔炎だけでなく、気管支炎も改善できるでしょう。実際に、副鼻腔などの手術をした方の多くが、気管支炎の症状も改善しました。

4-3.副鼻腔の手術実績がある耳鼻咽喉科を受診しよう

適切な治療を受けるためには、耳鼻咽喉科選びが重要なポイントとなります。なるべく、副鼻腔の手術実績がある耳鼻咽喉科を受診してください。前述したように、副鼻腔気管支症候群は、副鼻腔の手術をすることで気管支炎の症状もやわらぐ傾向があります。だからこそ、副鼻腔の手術実績があり、優れた腕を持っている耳鼻咽喉科を選ぶ必要があるのです。また、治療前に丁寧な説明をしてくれるか・きちんと検査を行ってくれるのかもチェックしておきたいポイントとなります。

副鼻腔気管支症候群に関してよくある質問

副鼻腔気管支症候群に関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.副鼻腔気管支症候群を放置するとどうなるの?
A.どんどん症状が悪化し、常に副鼻腔と気管支炎の症状に悩まされることになります。軽症のうちに治療を始めれば、症状が悪くなるのを防ぎつつ、治療期間も短縮できるでしょう。しかし、放置するほど状態が悪化するため、治療期間が長引いてしまう恐れがあります。治療期間が長引くと耳鼻咽喉科に通う頻度も多くなり、治療費も高くなってしまうでしょう。日常的なストレスや精神的な負担はもちろんのこと、生活にも大打撃を与えることになるので早めに治療を始めることが大切です。

Q.レントゲン・CT・MRI撮影で分かることは?
A.副鼻腔や気管支の状態がどのようになっているのか、細部まで確認できます。副鼻腔炎の場合は、鼻汁の量や質だけでなく、粘膜の腫れ具合・鼻ポリープなどの有無も確認しなければなりません。レントゲン撮影よりもCTのほうが、より副鼻腔の炎症の有無を確かめることができるでしょう。検査をする際は、CTやMRI撮影をしてくれるかどうかもチェックしてくださいね。

Q.小児の場合の治療法は?
A.成人よりも免疫力が低い小児の場合は、保存療法で治癒が期待できるでしょう。手術を行う必要はほとんどありません。ただ、子どもが副鼻腔気管支症候群になることはごく稀です。副鼻腔炎よりも気管支炎になりやすい傾向があるため、頻繁に咳をする場合は、念のため、小児科を受診してください。その際は、いつからどんな症状が起こり始めたのか、具体的に伝えることが大切です。具体的に伝えることで、より適切な治療法で症状をやわらげることができるでしょう。

Q.比較的、症状が軽症な場合の治療法は?
A.症状が軽症な場合は、気道粘液修復薬(L-カルボシステインなど)を用いることになるでしょう。また、びまん性汎細気管支炎のように抹消気道の去痰が必要なケースには、塩酸アンプロキソールといった気道粘膜潤滑薬を併用することもあります。薬を服用する際は、どのような効能があるのか説明を受けてから、正しく服用してくださいね。ちなみに、症状が中等の場合は、常用量の1/4~1/2量の14,15員環マクロライド薬を併用することが多いでしょう。

まとめ

副鼻腔気管支症候群は、慢性副鼻腔炎に気管支の慢性炎症が合併した状態のことを指しています。副鼻腔炎を放置すると、膿性の鼻水が落ちていき後鼻漏になったり、気管支にまで悪影響を与えたりするのです。合併症になってしまったら、基本的に、副鼻腔炎と気管支炎の両方の治療を続けることになります。ただし、内服療法で症状が緩和できない場合は、内視鏡下副鼻腔手術を行うこともあるでしょう。安心して治療が受けられるように、副鼻腔気管支症候群など副鼻腔関連の治療に長けた耳鼻咽喉科を受診してくださいね。

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