副鼻腔嚢胞とはどんな症状? 早期の治療を始めるために原因を知ろう!

ほおの違和感・腫れ・痛みや歯の痛みなどが顕著に現れ始めたとき、もしかしたら「副鼻腔嚢胞(ふくびくうのうほう)」になっているかもしれません。副鼻腔嚢胞の主な原因は手術の後遺症がほとんどで、放置するほど症状がひどくなります。なるべく早めに適切な処置を行うことが大切です。

そこで、本記事では、副鼻腔嚢胞の原因や症状・治療法などについて解説します。

  1. 副鼻腔嚢胞とは?
  2. 副鼻腔嚢胞の原因
  3. 副鼻腔嚢胞の症状
  4. 副鼻腔嚢胞の検査方法
  5. 副鼻腔嚢胞の治療法
  6. 副鼻腔嚢胞に関してよくある質問

この記事を読むことで、副鼻腔嚢胞の症状を改善するためのポイントが分かります。悩んでいる方や気になっている方は、ぜひチェックしてください。

副鼻腔嚢胞とは?

まずは、副鼻腔嚢胞がどのような状態を指しているのか基本情報をチェックしておきましょう。

1-1.副鼻腔に水分を含んだ「嚢胞」が形成される病気

副鼻腔嚢胞とは上顎洞(じょうがくどう)などの副鼻腔に「嚢胞」と呼ばれるものが形成される病気のことです。嚢胞とは、液状成分を持っており、水分が含まれています。この嚢胞が副鼻腔の骨壁を圧迫した状態を指し、顔面痛のほか眼球が変異したり視力に悪影響が起きたりするなど、体にさまざまな異常をきたすのです。

1-2.副鼻腔の仕組みを知ろう

嚢胞が発生する副鼻腔は、鼻腔を取り囲む骨の内部にある空洞のことです。前頭洞(ぜんとうどう)・篩骨洞(しこつどう)・上顎洞(じょうがくどう)・蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)の4つに分かれており、これらは鼻と口をつなぐ大切な部分でもあります。つまり、副鼻腔に嚢胞ができると、本来あるべき空洞が詰まってしまうことになるのです。口と鼻だけでなく、目にもつながっている部分でもあるため、眼球変異という症状も起こりやすい傾向があります。

1-3.上顎洞に発生する頻度が高い

副鼻腔嚢胞が発生する場所は、上顎洞が最も多いといわれています。全体の約8割が上顎洞に発生し、次に前頭洞・篩骨洞・蝶形骨洞の順となるのです。上顎洞は前述したように、顔の骨にある空洞(副鼻腔)の1つで、頬骨と歯の間にあります。主に、頭の骨を軽くしたり、声を共鳴させたりする役割を担っていますが、ここに嚢胞ができてしまうのです。一体、なぜ嚢胞ができるのか、次の項目でその原因を探っていきましょう。

副鼻腔嚢胞の原因

ここでは、副鼻腔嚢胞の主な原因について解説します。

2-1.上顎洞に形成されることが多いのは手術が関係している

副鼻腔嚢胞のほとんどは、副鼻腔に対する手術後の後遺症といわれています。

以前行われていた副鼻腔の手術は歯茎を切開して上顎洞を肉眼で見ながら粘膜をはぎ取るような方法でした。この場合一部残された粘膜を中心として何年もたってから嚢胞ができることがしばしばありました。

嚢胞は1つだけ形成されることもあれば、同時に複数個形成されることもあります。手術から数年という長い月日を経てから症状を自覚するケースがほとんどです。術後すぐに発症するわけではありません。

ただし、最近の内視鏡を用いる手術では粘膜を骨からはぎ取るような手技ではありませんので手術後の嚢胞はほとんどできません。

2-2.副鼻腔の慢性的な炎症が原因になることも

ほとんどの原因は術後の後遺症ですが、副鼻腔の慢性的な炎症が原因になることもあります。慢性炎症によって少しずつ液体成分が副鼻腔の中に蓄積されるようになり、嚢胞になるというわけです。副鼻腔の炎症が常に続いている状態はとてもつらく、鼻水・鼻づまりだけでなく、咳や頭痛、顔面痛などの症状が現れるでしょう。慢性的な炎症を放置することだけは絶対にしてはいけません。

2-3.原発性と続発性に分類される

副鼻腔嚢胞の原因を大きく分けると、原発性と続発性の2つがあります。過去の外傷や手術の影響によって起こる副鼻腔嚢胞は続発性、特に原因のないものは原発性です。また、慢性副鼻腔炎に対する副鼻腔根本術を受けた後に発症することが多く、この場合は術後性と呼ばれ、続発性に分類されます。ちなみに、副鼻腔根本術とは、前述したような内視鏡が普及する前によく採用されていた、歯茎を切開して行う手術のことです。内視鏡が普及されている現在では、あまり行われません。

副鼻腔嚢胞の症状

では、副鼻腔嚢胞はどのような症状が現れるのでしょうか。

3-1.ほおの違和感・腫れ・痛みや歯の痛み

副鼻腔嚢胞の代表的な症状といえば、ほおの違和感・腫れ・痛みです。ほおに違和感があるとつい疑いたくなるのが虫歯ですが、歯医者に行っても問題ないと診断されるでしょう。その場合は、副鼻腔に何らかの異常が起きている可能性が高めです。ほおの痛みが最初は歯の神経へと伝わり、歯が少しずつ痛くなります。いずれは、顔中に痛みが走ることになるのです。

3-2.感染症を併発するとさまざまな症状が出る

副鼻腔にできた嚢胞がどんどん大きくなると、嚢胞に感染症が併発し、さまざまな症状が現れるようになります。特に、嚢胞によって副鼻腔の周囲にある構造物が圧迫されるようになると、眼球の横にある篩骨洞や蝶形骨洞に悪影響を及ぼすのです。すると、そこにも嚢胞が形成され、眼球や視神経が圧迫されてしまいます。ものが二重に見えるなど、視力障害が起こるでしょう。圧迫によって眼球が飛び出すこともあります。

3-3.嚢胞ができる部位によって症状が異なる

副鼻腔嚢胞の症状で大きな特徴は、嚢胞ができる部位によって症状が変わることです。前頭洞に嚢胞が発生した場合、眉付近が腫れたり、目に異変が起きたりなど顔の上部部分に症状が出てくるでしょう。一方、上顎洞に発生した場合は、ほおの痛みや腫れが顕著に出てきます。症状によって、どの副鼻腔に嚢胞ができているのか分かるのです。

副鼻腔嚢胞の検査方法

では、副鼻腔嚢胞の検査はどのように行われるのでしょうか。検査と診断方法について詳しく解説します。

4-1.複視・ほおの腫れなどの症状+問診で確認する

一般的に、副鼻腔嚢胞は、複視やほおの腫れといった症状が出てきた際に疑いを持ちます。ただ、それらの症状だけでは判断できないため、過去に、慢性副鼻腔炎などの手術を受けたか・顔面外傷を負うような事故に遭ったか問診で確認することになるでしょう。また、目に異常が現れている場合は、視力や目の動きなどもチェックします。副鼻腔嚢胞は手術から数年経過して現れることが多いため、症状を自覚したときにはすでに進行している可能性が高いのです。

4-2.嚢胞の疑いがある場合は画像検査を行う

症状と問診で嚢胞の疑いがあると判断された場合、画像検査を行うケースがあります。CT検査やMRI検査などで、具体的に副鼻腔がどのような状態になっているのか調べるのです。もし、嚢胞が見つかった場合は、何個あるのか・大きさはどのくらいなのか・周囲の構造物を圧迫していないかなど、さまざまな視点から状況を把握し、評価することになるでしょう。耳鼻咽喉科を受診する際は、画像検査を行っているところを選んでください。

4-3.嚢胞に針を刺して液体が出るか確かめる

副鼻腔嚢胞の検査は、副鼻腔の手術を過去に受けたことがあるか否かが大きなポイントとなります。問診や症状をみた後、画像検査を行い、嚢胞が確認されたらそこに針を刺して内容物が吸引できるかをみることも診断法の1つです。嚢胞は水分が含まれているのが特徴なので、針を刺して液体が出てくるようであれば、嚢胞だと断定できます。針で刺す方法は治療にも使われますが、根本的な原因にアプローチするためには手術が必要です。具体的な治療に関しては、これから説明しましょう。

副鼻腔嚢胞の治療法

最後に、副鼻腔嚢胞の主な治療法とポイントを解説します。

5-1.痛みがひどい場合は抗生物質や鎮痛剤を使用する

副鼻腔嚢胞の腫れや痛みがひどくなっている場合は、抗生物質や鎮痛剤を使って痛みをやわらげます。ただ、この方法はあくまで一時的な処置です。液体成分がハッキリと分かる場合には、針を刺して液体を排出する方法もあります。また、嚢胞が感染を起こしているときは急速に状況が悪化している証(あか)しなので、抗菌薬を投与することもあるでしょう。

5-2.嚢胞の根本的な治療は手術

前述したように、嚢胞は症状を自覚した時点で進行している可能性があります。そのため、根本的に改善するためには、手術が主体となるのです。一般的に、どこも切開せず、鼻の穴から内視鏡を入れて手術を行うESS方法が用いられます。篩骨洞や蝶形骨洞にできた嚢胞には有利な手術です。また、前頭洞に嚢胞ができた場合は、内視鏡手術のほか、眉の下を切開して嚢胞を除去する手術が用いられることもあるでしょう。手術内容は、副鼻腔の状態で決まるので、まずは検査で状態を確認することが大切です。

5-3.手術実績のある耳鼻咽喉科を受診しよう

副鼻腔嚢胞の疑いを持った場合は、なるべく早めに耳鼻咽喉科を受診してください。どの耳鼻咽喉科を受診すべきか悩むときは、副鼻腔や内視鏡手術の実績があるところを選ぶのがポイントです。手術経験が豊富な耳鼻咽喉科なら、適切な処置で副鼻腔嚢胞が改善できるでしょう。

副鼻腔嚢胞に関してよくある質問

副鼻腔嚢胞に関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.副鼻腔の手術を受けた人が気をつけることは?
A.副鼻腔嚢胞はなかなか自覚症状が現れないからこそ、手術を受けたことがある人は日ごろからほおの痛みや腫れなどに敏感になっておかなければなりません。少しでも異変を感じた際には、すぐに耳鼻咽喉科を受診しましょう。特に、視力障害を伴う場合は急を要するため、早めの受診が必要です。

Q.再発の可能性はあるの?
A.はい。嚢胞に針を刺して分泌物を吸引すると、一時的に症状がやわらぎますが、しばらく経過すると、分泌物が再び充満し嚢胞が再発するケースが多いのです。根治のためには、手術が必要でしょう。ただし、手術後の再発率は約5~10%といわれているので、確率を低くするためにも、信用できる耳鼻咽喉科を選ぶことが大切です。再び手術することがないように、慎重に耳鼻咽喉科を選んでくださいね。

Q.早急な手術が必要なケースは?
A.視力障害が起きているときは、副鼻腔に発生した嚢胞が視神経を圧迫している証拠なので、24時間以内の緊急手術が必要です。ほかにも、視野障害・眼球運動障害・まぶたの腫れやたるみが顕著に現れている場合は急を要します。ほおの腫れや痛みとは別に、目に異常が現れた際はすぐに耳鼻咽喉科を受診してください。

Q.適切な治療を受けるポイントは?
A.副鼻腔嚢胞の治療は、現れている症状や感染の有無・副鼻腔周囲の構造物への圧迫状況など、さまざまな点を考慮した上で方法や方針を決めることが大切なポイントです。治療を受ける前に、しっかりと副鼻腔の状態を確かめなければなりません。きちんと検査をしてくれるか・治療を始める前の説明が丁寧かどうかなど、耳鼻咽喉科の対応を確認することも大切でしょう。

Q.副鼻腔嚢胞の予防策は?
A.慢性副鼻腔炎から副鼻腔嚢胞になるケースもあるため、炎症を慢性化させないことが嚢胞発生の予防につながるでしょう。副鼻腔の炎症は、細菌やウイルスなどが関係原因です。免疫力が正常に作動すれば、体外へ異物を排出しようとしますが、免疫力が低下していると排出する力が働きません。免疫力向上のため、栄養のある食生活や十分な睡眠・運動などを心がけましょう。また、異変を感じたらすぐに耳鼻喉科を受診するのも、大切な予防策です。

まとめ

副鼻腔嚢胞は、副鼻腔の自然口が閉ざされたことで生じる疾患です。3分の2が手術後の後遺症が原因といわれていますが、残りは原因が分かりません。長期間の治療が必要といわれていることもあり、覚悟を持って症状と付き合うことになるでしょう。投薬や針による嚢胞排出などの保存療法を行いますが、根本治療には手術が必要です。一般的な手術方法は、ESS方法と呼ばれる内視鏡を使用し嚢胞を排出します。治療を受ける際は、なるべく副鼻腔関連の治療に長けた耳鼻咽喉科を選びましょう。

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