統合失調症

統合失調症と向き合うために!
症状や治療法・支援制度について紹介

かつては「精神分裂病」と呼ばれていた統合失調症。現在はおよそ100人に1人がその症状に苦しんでいます。しかし、統合失調症は早期に発見し治療することで過半数が回復すると言われているのです。もし、あなた自身や大切な人が統合失調症で苦しんでいるなら、この病気について詳しく知ってください。そして、病気と向き合い、治療するための方法を検討してみましょう。この記事では、統合失調症の主な症状や治療法・予防方法などをまとめてご紹介しています。

この記事を参考にして、統合失調症と向き合う方法を見つけてください。

01. 統合失調症という病気を知ろう

統合失調症という病名は耳にしたことがあっても、具体的にどんな病気なのか知らない人は多いでしょう。まずは、この病気について詳しくご紹介します。

1-1.脳内の「統合する機能」が失調する病気

私たちは「喜び」や「怒り」「悲しみ」「楽しみ」といったさまざまな感情を持っています。そして、常に考えて行動しているのです。こうした感情や思考は、脳内の精神機能によって行われています。統合失調症は、何らかの原因でさまざまな情報や刺激に過敏になりすぎ、脳が対応できなくなる病気です。そのため、感情や思考をまとめあげることができなくなります。

1-2.症状は大きく分けて3種類

統合失調症の症状は大きく分けて3種類あります。

1-2-1.あるはずのないものが現れる「陽性症状」

陽性症状とは、本来あるはずのないものが現れる症状のことを言います。たとえば、実際にはないものをあるように感じる「幻覚」です。視覚や聴覚・嗅覚・触覚などさまざまな感覚で現れます。そして、最も多いのが、実在しない人の声が聞こえるという「幻聴」です。自分に対する悪口や噂(うわさ)・何かの命令が聞こえるといった症状が起こります。また、非現実的なことやあり得ないことを信じ込む「妄想」も特徴的な症状の一つです。「見張られている」「騙(だま)されている」といった被害妄想が代表的でしょう。

そのほかにも、会話や行動がまとまりのないものになる、極度に興奮したり奇妙な行動をとったりするなども、陽性症状に当てはまります。

1-2-2.意欲が低下する「陰性症状」

感情表現が乏しくなる、思考が低下するなどの症状を言います。単なる気分の落ち込みではなく、感情そのものの表現が乏しくなるのです。また、学校の勉強や仕事・趣味のことなど、何事に対しても意欲や気力がわかなくなり、周囲のことへの興味や関心がなくなってしまいます。その結果、自ら何らかの目的をもった行動をすることができなくなり、ひどい場合は会話すらもできなくなってしまうのです。人とのかかわりを避け、自室に引きこもる生活に陥るケースも珍しくありません。

1-2-3.日常生活に困難をもたらす「認知機能障害」

認知機能に障害が起こり、生活・社会活動全般に支障をきたすことになります。認知機能とは、記憶や思考・理解・計算・学習・言語・判断などの知的な能力のことです。たとえば、周囲のさまざまな情報や刺激に対して、必要なものだけに気を集中することができません。会話中に周囲の動きや物音などが気になり、落ち着きのない行動をとることもあります。

1-3.発症原因は一つじゃない

統合失調症が発症する原因としては、いくつかの要因が考えられます。以前は遺伝が大きな要因だと考えられていました。確かに、統合失調症に遺伝的な要素はあります。しかし、あくまでも原因の一つに過ぎません。遺伝以外には、妊娠期・出生時に受けた障害の影響についても、原因の一つとして考えられています。胎児期のウイルス感染や栄養不良・出生時の無酸素状態などが脳の機能に障害を与え、発症の原因になるのではないか、という考え方もあるようです。

1-4.どんな人がなりやすいの?

統合失調症の人には、一定の性格傾向があることが分かっています。たとえば、「内気でおとなしく神経質な性格でありながら、無頓着で傷つきやすい気質を持っている人」「人とかかわるのが苦手で、1人でいることを好む傾向のある人」は、統合失調症になりやすいと言われているのです。もちろん、すべての人に当てはまるわけではありません。そのほかにも、ストレスフルな環境は統合失調症の発病に影響するという説もあります。

1-5.患者数は全国で70万人程度

統合失調症の患者数は、現在全国に70万人いることが分かっています。しかし、実際には発症していても受診していない、病気を周りの人に隠している人も多いでしょう。その多くは思春期から30歳までに発病し、全体の約70%を占めているのです。平均の発症年齢は、男性が27歳、女性が30歳となっています。

1-6.統合失調症だった有名人もいる!

統合失調症は意外と身近な病気です。実際に、統合失調症ではないかと噂(うわさ)があったり、本人が告白したりしている有名人もいます。昔の人でいうと、夏目漱石や芥川龍之介も統合失調症だったと言われているのです。最近では、玉置浩二さんや岡村隆史さんもそういった時期があったのではないかと噂(うわさ)されています。

02. 統合失調症のチェック方法

統合失調症にはさまざまな症状があるため「本当にそうなのか?」と疑問に思う人も多いでしょう。家族や友人に統合失調症が疑われる場合のチェック方法をご紹介します。

2-1.チェックリスト

統合失調症ではないかを調べるために、本人が訴える症状を以下の項目に照らし合わせてチェックしてみてください。

  • 自分を責める、命令する正体不明の声が聞こえる。
  • 極度の不安感や緊張感がある。
  • 誰かから監視・盗聴され、狙われていると感じる。
  • 自分の考えていることが周りにバレている気がする。
  • 部屋に閉じこもり、1日中ぼんやりしている。
  • 自分の意思とは関係なく動いている感じがする。
  • みんなが自分の悪口を言ったり、嫌がらせをしていると感じる。
  • 些細(ささい)なことに過敏になり、興奮するようになった。
  • 「楽しい」「嬉しい」「心地よい」といった感情に乏しい。
  • 不眠症あるいは過眠症になった。
  • 人と話すのが苦痛になり、誰とも話せなくなった。
  • 独り笑いをしたり独り言を言ったりするようになった。
  • 直前のことを思い出せない。
  • 考えがまとまらない。
  • 一つのことに集中できない。
  • とっさの判断ができなくなった。
  • 何をするにもやる気が起きない。

以上の項目のうち、当てはまるものが5個以上あり、その状態が1か月以上続いている場合は、統合失調症である恐れがあります。

2-2.別の病気も考えられる?

こういった症状がある場合、統合失調症以外に別の病気である可能性も考えられます。たとえば、強迫性障害や分裂病型障害・うつ病などがあるでしょう。特に、はじめにうつ病だと診断され、後になってから統合失調症だということが判明するケースは少なくありません。うつ病では「何もやる気が起きない」「気持ちが沈んでしまう」など、統合失調症と同様の陰性症状が現れることが多いのです。また、統合失調症とうつ病は併発する恐れもあります。

03. 統合失調症が及ぼす影響について

統合失調症になってしまうと、日常生活にどのような影響を及ぼすことになるのでしょうか?また、放置するとどうなってしまうのか知っておいてください。

3-1.日常生活への影響

統合失調症は、悪化したり慢性化したりするものです。妄想や幻覚は長年続くこともあり、いっそう激しくなる可能性もあるでしょう。周りに当たり散らして、家族や近所の人が被害を受けるケースも少なくありません。また、陰性症状が悪化することも多く、仕事や家事ができなくなるのはもちろんのこと、人とのかかわりを拒絶するようにもなります。自分自身のことにも関心がなくなるため、身だしなみを気にしなくなる人も多いのです。

3-2.放置するとどうなる?

統合失調症は、放置しても治ることはありません。妄想や幻覚、異常行動が悪化すると、以下のような行動に出る場合もあるのです。

  • 大暴れをしたり大声でわめいたりする
  • 独り言を言い続ける
  • 徘徊する
  • 他人に暴言を吐く
  • 人の家に上がり込む
  • 車の前に飛び出す
  • 自分の殻に閉じこもり、寝たきりになる

つまり、統合失調症を放置すると、いわゆる社会的な活動ができなくなってしまうのです。

04. 統合失調症の治療法

では、統合失調症はどのように治療していくのでしょうか。

4-1.どのように診断されるの?

統合失調症は症状や現れ方が多彩であるため、気づかない場合も少なくありません。診断方法としては、本人または家族との問診を中心にすすめることになるでしょう。どのような症状が現れたか、いつから始まったか、どのように経過したかを生育歴や既往歴・家族歴などの情報とともに診断していきます。

4-2.どんな治療法があるの?

統合失調症は、抗精神病薬と精神科リハビリテーションによる治療が基本になります。抗精神病薬は、脳内で過剰になっている神経伝達物質の働きを調整することで症状を改善していくことになるのです。ほかにも、抗不安薬や睡眠薬などを併せて処方することもあります。同時に、十分な休養をとって心身の元気を取り戻し、症状をコントロールできるようになれば、リハビリテーションを行っていくことになるでしょう。さまざまな社会復帰のプログラムや支援施設を利用して、無理のないスケジュールを計画することが大切です。

4-3.薬の種類と副作用は?

統合失調症の治療には、必ず抗精神病薬を使用します。統合失調症は再発を繰り返しやすい病気です。そして、再発を繰り返すほど脳がダメージを受け、人格水準が低下してしまいます。そのため、再発をできる限り防止する必要があるのです。再発を防止するために最も確実な方法は、やはり薬でしょう。現状では、薬の服用を続けることが重要とされているのです。代表的な抗精神病薬には次のようなものがあります。

  • 第1世代(定型)抗精神病薬…コントミン・セレネース
  • 第2世代(非定型)抗精神病薬…リスパダール・ロナセン・ルーラン

また、抗精神病薬で発生する可能性がある副作用には、以下のようなものがあります。

  • 手が震え・足がむずむずする
  • 口の中が乾く
  • 目がぼやける
  • 眠気
  • 便秘

4-4.漢方やサプリメントも活躍している!

薬の副作用を軽減するため、漢方薬やサプリメントによる症状の改善も研究が進められています。

4-4-1.漢方薬

東洋医学で注目を集めているのが漢方薬です。統合失調症のような精神病にも効果があると言われています。もちろん、漢方薬による治療はあくまでも補助的なものです。しかし、副作用を抑える役目として活躍することもあるため、ぜひチェックしてみてください。

4-4-2.サプリメント

サプリメントによる栄養療法でセロトニンの活性化を促し、脳内物質のバランスを調整することも可能です。トリプトファンやGABA・マルチビタミンなどのサプリメントは、統合失調症の症状を改善できるのではないかと注目を集めています。

05. 統合失調症を予防するには?

統合失調症を予防するために、日ごろから気をつけておきたいことをご紹介します。

5-1.食生活を改善する

統合失調症はドーパミンの過剰分泌によるものだと言われているため、食生活に気をつけることは非常に大切です。神経物質を調整したりドーパミンを抑制したりする食べ物をバランスよくとるようにしましょう。神経伝達物質を調整する食べ物には、乳製品やレバー・赤身魚・肉類・バナナ・大豆などがあります。また、発酵食品や玄米・カカオ・小魚にはドーパミン抑制作用があるのです。こういったものを含めて3食バランスよくしっかり食べるようにしてください。また、穀物やカフェインを過剰摂取すると気分変調の原因になるため、注意が必要です。

5-2.ストレスをためない

統合失調症を発症する原因の一つとして、過度なストレスは大きな割合を占めます。ストレスに強い人は、精神疾患の病気になりにくいと言われているのです。普段からなるべくリラックスするように心がけ、ストレスをためこまないことが大切でしょう。しっかりリラックスできるように、自分なりのストレス解消法を見つけてください。

5-3.統合失調症のときに「やってはいけないこと」は?

統合失調症は、早い段階で治療を始めれば早期に回復できる病気です。しかし、中には自分の症状に気づかない、または気づかないふりをして、治療せずにいる人もたくさんいます。家族が病気を受け入れず、放置しているケースも多いでしょう。最も大切なことは、病気を自覚すること。そして、適切な治療を早めに受けることなのです。統合失調症のサインが現れた時点で、すぐに治療を受けることを検討してください。放置してしまうことこそが一番「やってはいけないこと」なのです。

06. 統合失調症の治療を行っている病院の紹介

統合失調症の治療を行っている病院をご紹介します。

ゆうメンタルクリニック
上野にあるクリニックです。「患者の話をよく聞いてくれる」と評判で、ほかの病院から移ってくる患者さんも多くなっています。カウンセリングに力を入れており、薬は最低限で抑えるという方針が人気の理由です。

クボタクリニック
錦糸町にあるクリニックで、カウンセリング時間が長いのが特徴です。長く通っている患者さんも多くなっています。

吉祥寺病院
統合失調症の治療を専門に行っています。入院から在宅まで、幅広く患者さんの支援をしているのが特徴です。

07. 統合失調症で利用できる支援制度について

統合失調症患者の中には、社会で働くことができない人もたくさんいます。そういった人たちのために、経済的な支援制度があることをご存じでしょうか。

障害年金

一定の条件を満たした場合、障害基礎年金または障害厚生年金を受けることができます。1級ですと年に100万円程度、2級なら80万円程度を受給することが可能です。

生活保護

世帯としての収入が十分でない場合には、この制度を利用できます。障害等級を認められている場合は加算されることもあるため、各自治体に確認してみましょう。

心身障害者扶養共済

家族が亡くなってしまったときのための備えです。保護者が掛け金を払っていき、将来障害や死亡などの事態が起きたとき、本人に対して年金が支払われます。

自立支援医療制度

治療に必要な料金の負担額が、通常の1割負担で利用できるという制度です。月額2万円が上限負担額となります。

障害者手帳

この手帳を提示すると、さまざまな料金を割引価格で利用できるようになります。

08. 統合失調症の関連書籍紹介

統合失調症の関連書籍をご紹介します。

統合失調症がわかる本-正しい理解と対処のすべて
統合失調症の最新情報と対処の仕方を紹介しています。病気の特徴・治療から、リハビリ、日常での接し方をまとめた1冊です。

マンガでわかる!統合失調症
統合失調症という病気をマンガで正しく理解できる1冊です。多くの当事者による監修の画期的なコミックエッセイ!

統合失調症がやってきた
お笑いコンビ「松本ハウス」として活躍中、統合失調症により活動を休止したハウス加賀谷が書き下ろした感動の1冊!

09. 統合失調症治療体験ブログの紹介

統合失調症治療の体験ブログをご紹介します。

統合失調症という病気と家族
統合失調症患者とその家族の日々のできごとや悩みをつづったブログです。

統合失調症ママの日常&育児ブログ
統合失調症を抱えながら出産し育児しているママの日常をつづったブログ。統合失調症患者の結婚生活や育児について語っています。

一人暮らしで統合失調症、寛解までの道のり!
家族がいない一人暮らしの統合失調症患者が寛解したことを伝えるブログです。寛解までに役立ったことを紹介しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。統合失調症は決して珍しい病気ではありません。しっかりと病気と向き合うことで早期に回復し、社会復帰できる人もたくさんいるのです。まずは統合失調症という病気について知り、自分にとってどのような治療法が合っているのか考えるためにも、ぜひこの記事を参考にしてください。

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